梨を買うときは「幸水にしようか、豊水にしようか」。
ぶどうなら「巨峰もいいけど、シャインマスカットも捨てがたい」。
では、れんこんは?
「今日は茨城県産が安いわね」
……だいたい、そんなところではないでしょうか。
れんこんにも品種があるなんて、普段はあまり意識しませんよね。
ところが、茨城県の霞ヶ浦周辺では、そんなれんこんが一大産業になっています。
しかも、この土地がれんこんの大産地になった背景には、ちょっと意外な事情がありました。
かつて農業の悩みの種だった「水」が、れんこんづくりでは大きな味方になったのです。
水が多すぎる土地で、何を育てる?
霞ヶ浦は、茨城県南部に広がる大きな湖。
周辺には低く湿った土地が広がっています。
今でこそ、見渡す限りのれんこん田が知られていますが、かつては水はけの悪さや水害に悩まされる地域でもありました。
稲作にとっては、扱いの難しい土地もあったのです。
ところが、れんこんにとっては話が違います。
れんこんは、水を張った泥の中で地下茎を太らせる植物。
水が豊富で、湿った土がある。
その土地の条件を、れんこん栽培に生かすことができました。
もちろん、最初からすべてがうまくいったわけではありません。
品種の選定や栽培技術、収穫方法の工夫を重ねながら、霞ヶ浦周辺のれんこん栽培は発展していきました。
土地の弱点をなくしたのではなく、その土地に合う作物を育てた。
これが、霞ヶ浦のれんこんの面白いところです。
現在、茨城県は全国最大のれんこん産地。
スーパーで何気なく手に取る茨城県産れんこんの背景には、こんな土地と農業の歴史があるんですね。
泥の中から、どうやってれんこんを取り出す?
れんこんの収穫風景を見たことがありますか?
畑に入って、スコップで掘り起こす。
そんな光景を想像すると、ちょっと違います。
霞ヶ浦周辺で広く使われているのは、**「水掘り」**という方法。
ポンプから送られる水の勢いで、れんこんの周囲の泥を洗い流していきます。
泥の中に隠れていたれんこんが、少しずつ姿を現す。
なるほど。水の豊富な産地ならではの収穫方法です。
ただし、勢いよく水を当てればいいというものではありません。
れんこんは見た目以上に傷つきやすい野菜。
途中で折れたり、表面を傷つけたりしないよう、泥の中の位置を確かめながら丁寧に掘り出します。
水を使う豪快な作業に見えて、実はかなり繊細。
水で育て、水で掘り出す。
霞ヶ浦のれんこんは、収穫の最後まで水と深い関係があるのです。
ところで、れんこんにも名前があるんです
ここで、最初の話に戻ります。
梨には幸水や豊水がある。
ぶどうには巨峰やクイーンニーナがある。
れんこんにも、もちろん品種があります。
その一つが、「エノモト」。
エノモトは早生のれんこんとして知られ、白さやシャキシャキした食感が特徴とされています。
ほかにも「金澄(かなすみ)」系や「ダルマ」など、れんこんにはさまざまな品種があります。
産地によって栽培される品種も違えば、収穫時期も違う。
例えば、新潟県の大口れんこんでは、早い時期にエノモトを出荷し、秋が深まると晩生のダルマへと移っていきます。
同じ「れんこん」という名前で売られていても、季節によって品種が変わることがあるわけです。
では、霞ヶ浦のれんこんは全部エノモトなのでしょうか。
もちろん、そんなことはありません。
霞ヶ浦周辺でも複数の品種が栽培されています。
「霞ヶ浦のれんこん」は産地の話。「エノモト」は品種の話。
この違いを知っておくだけでも、れんこんを見る目が少し変わってきます。
シャキシャキ?ホクホク?れんこんの食感は一つじゃない
れんこんといえば、シャキシャキ。
でも、煮物にするとホクッとしたり、すりおろして加熱すると、もっちりしたり。
同じ野菜なのに、ずいぶん違います。
実は、れんこんの食感は品種だけでなく、使う部位や切り方、加熱方法によっても変わります。
例えば、薄く切って短時間で火を通せば、歯切れのよさを楽しみやすい。
厚めに切ってじっくり煮れば、また違った食感になります。
すりおろして団子にするのも、れんこんならでは。
つまり、エノモトがシャキシャキした品種だからといって、どんな料理でも同じ食感になるわけではありません。
ここは、料理をする人には面白いところです。
いつものれんこんを、少し違う切り方で調理してみる。
それだけでも、新しい発見があるかもしれません。
れんこんは、切り方や火の通し方で食感が変わる、なかなか面白い野菜です。
ところで、薬膳ではれんこんをどう捉えているのでしょう?
食べ方による違いや、日々の食事への取り入れ方が気になったら、こちらもどうぞ。
れんこんは冬の野菜、と思っていませんか?
おせち料理の煮しめに欠かせないれんこん。
穴が開いていることから「先を見通せる」とされ、縁起のよい食材として親しまれています。
だからでしょうか。
れんこんというと、秋から冬の野菜という印象が強いですよね。
ところが霞ヶ浦周辺では、露地栽培とハウス栽培を組み合わせ、長い期間れんこんを出荷しています。
秋冬はもちろん、夏にもれんこんが出回ります。
若い時期に収穫されるれんこんと、寒い季節のれんこん。
同じ産地でも、季節によって楽しみ方が変わるのです。
秋になったら煮物。
夏なら薄切りにして、さっと火を通す。
そんなふうに季節で料理を変えてみるのもよさそうです。
霞ヶ浦のれんこん、農家さんから取り寄せてみる?
ここまで読んだら、ちょっと気になりませんか。
スーパーで買うれんこんもいいけれど、産地から届くれんこんはどうなんだろう。
霞ヶ浦周辺には、農家さんから直接れんこんを取り寄せられるところがあります。
食べチョクで、育てた人から買う
産地直送サイト「食べチョク」では、茨城県かすみがうら市の農家さんが育てたれんこんも紹介されています。
例えば、RENCOOON CREATE工房。
水温や水位などの栽培環境を管理しながら、れんこんづくりに取り組んでいる生産者さんです。
スーパーではなかなか知る機会のない、育てている人の工夫まで読めるのが産地直送の面白さ。
商品ページでは、れんこんの特徴や生産者さんの取り組みも紹介されています。
注文を受けてから収穫する農園も
かすみがうら市の藤井農園では、れんこんの栽培や収穫へのこだわりを紹介しています。
公式オンラインショップもありますが、商品が掲載されていない時期もあるため、購入を希望する場合は販売状況を確認してみてください。
また、かすみがうら市の特産品を扱う「かすみマルシェ」でも、れんこんが紹介されています。
今度れんこんを買うとき、ちょっと見てみませんか
水が多くて困っていた土地。
その水を生かして育てられるようになったれんこん。
泥の中から水の力で掘り出し、今では全国に届けられています。
そして、ひとくちに「れんこん」といっても、品種があり、季節があり、食感にも違いがある。
普段は何気なく買っていた野菜ですが、なかなか奥が深いものです。
次にスーパーでれんこんを見かけたら、産地表示をちょっと確認してみてください。
「茨城県産」と書いてあったら、その向こうには霞ヶ浦の広いれんこん田があるかもしれません。
そして、もし品種名まで書かれていたら。
それは、ちょっと面白いれんこんに出会ったのかもしれませんね。

コメント